Tumor 
Immunity
腫瘍免疫の基礎知識(垣見の腫瘍免疫学)

免疫学教室で実施している研究のベースとなる腫瘍免疫に関する基礎知識、考え方を概説します。

6.Tumor microenvironment

Science 20 December 2013のScience誌

Science 20 December 2013のScience誌において、Cancer ImmunotherapyがBreakthrough of the Yearとして取り上げられた。
CTLA-4や抗PD-1抗体などの免疫チェックポイント阻害剤治療による抗腫瘍効果の確認と、CTL治療/CAT-T細胞治療の強力なパワーによって、これまでがん免疫治療に対して懐疑的であったOncologistが免疫治療の有効性を初めて認めることになった記念すべき特集であった。今後さらなる併用治療の開発が進み、がん免疫治療抜きにはがん治療を語ることはできない状況になっていくことが予想される。

Cancer Immunotherapy

There is another layer, too, a sense of paradigms shifting. Immunotherapy marks an entirely different way of treating cancer-by targeting the immune system, not the tumor itself.

がん細胞の増殖を抑制するという観点から開発された抗がん剤や分子標的薬と異なり、がん免疫治療の成功により、免疫を介して、間接的にがん細胞を制御することが可能であることを明らかにした点が、まさにがん治療の一番大きなパラダイムシフトであった。現在臨床応用されている免疫チェックポイント阻害剤は、T細胞上に発現している分子あるいはそのリガンドを標的としているが、T細胞に限らず、より広く免疫細胞、さらに腫瘍内の微小環境にかかわるすべての細胞や分子などを標的として治療戦略が可能であることの重要性が強調されている。すでに血管新生阻害剤が臨床応用で成功を収めているが、今後さらなる細胞や分子を標的とした治療法の開発が予想される。そこで、腫瘍内微小環境に関して触れてみたい。

がん、病気として認識される腫瘍では、腫瘍に対する免疫抑制性の環境が形成されている。T細胞を中心に腫瘍免疫の説明を続けてきたが、腫瘍内は、がん細胞とT細胞のみならず、多彩な免疫担当細胞や間質細胞が存在する。

腫瘍に対する免疫抑制性の環境

このような免疫抑制性の環境にかかわる細胞や分子が治療標的となり得る。

免疫抑制性の環境にかかわる細胞や分子

厄介なことに、免疫細胞は、環境によって、免疫応答を誘導する作用を示したり、抑制する作用を示す2面性を持っている。

免疫細胞 2面性

このような複雑な免疫抑制性の腫瘍内微小環境は、腫瘍と免疫の相互作用で形成される。

腫瘍と免疫の相互作用

がん細胞の遺伝子変異が、周囲の環境・免疫を形づくることが知られている。

がん細胞の遺伝子変異が、周囲の環境・免疫を形づくる

がん細胞の遺伝子変異が、周囲の環境・免疫を形づくる

患者の遺伝的素因が免疫に大きくかかわることも報告されている。

患者の遺伝的素因が免疫に大きくかかわることも報告

患者の遺伝的素因が免疫に大きくかかわることも報告

抗腫瘍免疫応答に影響を与える因子としては、

全身の免疫状態、腫瘍のゲノム、エピゲノム、腫瘍微小環境、そして環境因子など、非常に多様な因子が複雑に関与している。個々の患者において、これらの因子が異なることから、これからのがん治療では、一人ひとりの患者において、このような免疫抑制因子を同定することが求められている。

ページの
先頭へ